ラット肝ホスホリボシルピロリン酸合成酵素は、2種の触媒サブユニットとさらにそれと相同性のある39kDa制御タンパク質(PAP39)を含む分子量100万程度の大きな多量体(計算上34mer)として存在する。本研究では 1.大腸菌で発現させ精製した触媒サブユニットの多量体を1MMgC1_2処理により解離させたのちグルタチオン-S-トランスフェラーゼ-PAP39の融合タンパク質と混合し、グルタチオン-Sepharoseを加え遠心して融合タンパク質をゲルとともに沈殿させ、このとき結合している触媒サブユニットの量を測定した。その結果、2種の触媒サブユニットはいずれも単独でPAP39と結合し、その結合にちがいはみられなかった。 2.触媒サブユニットとPAP39 cDNAをそれぞれ共存可能なベクターに組み込み、同時に大腸菌に取り込ませた。可溶性画部分より精製した標品では、触媒サブユニットとPAP39とが高分子量の複合体を形成し、複合体を安定して得る方法が確立できた。複合体中の触媒サブユニットとPAP39との比は簡単な整数比ではなく、しかも発現ベクターのコピー数、すなわち遺伝子量に応じて変動した。触媒サブユニット当たりの比活性は、PAP39を約40%含む複合体で50%以下に低下し、PAP39のみで活性抑制作用をもつことが証明された。3.上記複合体を、可視領域に吸収をもつ架橋試薬ビス(4-フルオロ-3-ニトロフェニル)スルホンで修飾したところ分子量の大きな架橋産物が得られた。しかしその収量が低いため、現在架橋領域を含むペプチド断片を得るまでにはいたっていない。このペプチド断片の調整とそのアミノ酸配列決定が今後に残された課題である。
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