研究概要 |
L-2-ハロ酸のD-2-ヒドロキシ酸への加水分解を触媒するL-2-ハロ酸デハロゲナーゼと、2-ハロ酸のD-、L-両異性体に作用し、L-、D-2-ヒドロキシ酸を与えるDL-2-ハロ酸デハロゲナーゼ(立体反転型)の構造と反応機構を解析した。 L-2-ハロ酸デハロゲナーゼを用い、1分子の酵素が1回だけ反応を触媒するSingle Turnoverの反応と、1分子の酵素が複数回反応を触媒するMultiple Turnoverの反応をH_2^<18>O中で行い、生成物2-ヒドロキシ酸への^<18>Oの取り込みの有無を調べた。L-2-クロロプロピオン酸を基質としたところ、生成物乳酸への^<18>Oの取り込みはMultiple Turnoverの反応でのみ認められた。これは、溶媒の水分子の酸素原子が、いったん酵素に取り込まれた後、基質に取り込まれたことを示唆している。H_2^<18>O中で反応を行った酵素をプロテアーゼで分解し,得られたペプチド断片をタンデムMS/MS法で分析した結果、Asp10への^<18>Oの取り込みが明らかとなった。本酵素反応では、Asp10の側鎖カルボキシ基が基質のα-炭素を攻撃してハライドイオンが脱離し、次いで、酵素と基質からなるエステル中間体が加水分解されて2-ヒドロキシ酸が遊離するものと考えられた。 一方、DL-2-ハロ酸デハロゲナーゼ(立体反転型)を用い、D-またはL-2-クロロプロピオン酸を基質としてH_2^<18>O中で反応を行ったところ、1分子の酵素が1回だけ反応を触媒するSingle Turnoverの反応でも、1分子の酵素が複数回反応を触媒するMultiple Turnoverの反応でも生成物乳酸への^<18>Oの取り込みが認められた。本酵素反応では、溶媒の水分子が直接基質を攻撃して加水分解が起こるものと考えられた。
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