研究概要 |
ホスファチジン酸ホスファターゼ(PAP)を既報(Kanoh et al,1992,JBC,267)にしたがい、ブタ胸腺膜画分から2000倍に部分精製し、これを用いて更なる精製の検討を行った。様々なクロマトグラムにおける挙動から35kDaタンパク質がPAPであること考えたが、その精製法を確立するに到らなかった。そこで次に、PAP部分精製標品を電気泳動で分離、35kDaのバンドがブロットされたPVDF膜を切り出してアミノ酸部分配列の決定を試みた。その結果N末端のアミノ酸配列15残基が明らかになったので、これを基に調整したペプチド抗体を用いて以下の知見を得た。(a)この抗体は部分精製標品のPAP活性をほぼ完全に沈降した。(b)放射能標識した部分精製標品からは35kDaタンパク質だけが沈降した。(c)このタンパク質はNグリコシド型糖鎖を持っており、Nグリカナーゼ処理によってタンパク質のサイズは約29kDaに変化した。(d)ショ糖密度勾配遠心法によって胸腺細胞の細胞内小器官を分画したところ、免疫沈降するPAP活性は細胞表面膜に存在した。したがって、我々はこの35kDaタンパク質が表面膜結合性PAPであると結論した。(9th International conference on second messengers&phophoproteins,1995,Nashvilleおよび第68回日本生化学会大会,1995,仙台にて口頭発表) 現在は35kDa-PAPのN末端アミノ酸配列をもとにしてcDNAクローニングを試みている。
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