大腸菌のロイシルtRNA合成酵素がtRNAのどのような構造を認識してtRNAの3′末端にロイシンをエステル結合する(ロイシル化)のか調べることを目的として、ランダムな塩基配列を含む未修飾tRNA^<Leu>からなるtRNAのプールを調製し、その中からロイシル化されたtRNAを選択する方法の研究を行った。まず大腸菌Q13株からのロイシルtRNA合成酵素の生成を、陰イオン交換樹脂カラムとハイドロキシアパタイトカラムを用いて行った。次にtRNAとロイシンtRNAを分離する実験系の開発を行った。ナフトキシ酢酸ヒドロキシコハク酸イミドエステルを用いて、tRNAに結合したロイシンのアミノ基をナフトキシアセチル化する。逆相HPLCにかけると、tRNAとナフトキシアセチル・ロイシルtRNAが分離出来た。次にこの実験系を用いて、ランダムな塩基配列を含むtRNA^<Leu>のプールからロイシル化されるtRNAのみを選択することが可能かどうか検討を行った。大腸菌tRNA^<Leu>のD-ループにあるA14を他の3種類の塩基に置き換えると、ロイシン受容活性が著しく低下する。そこで、14番目にランダムな塩基を導入したtRNA^<Leu>を調製し、このtRNAプールをロイシル化後続いてナフトキシアセチル化し、逆相HPLCにかけてナフトキシアセチル・ロイシルtRNAが溶離する時間の溶離液を分取した。この段階ではナフトキシアセチル・ロイシルtRNAのピークは検出されなかった。しかし、分取した溶離液をアルカリ条件下で脱アシル化後RT-PCRを用い、得られたcDNAを基質にして調製したtRNAをロイシル化後ナフトキシアセチル化し、逆相HPLCにかけると明瞭なナフトキシアセチル・ロイシルtRNAのピークが検出された。
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