グルコシルセラミド合成酵素は、糖脂質合成の第一段階を触媒する最も重要な酵素である。しかしながら、その精製及び活性測定が困難なことからほとんど研究されていない。本酵素の活性を生体内で調節することができれば、様々な、糖脂質蓄積症、癌転移、ある種の皮膚疾患等の治療への応用が期待できる。 今回我々は、本酵素の特性を明らかにするためにそのcDNAのクローニングを試み、これに成功した。実験方法は、最近、Seed等によって開発された発現クローニング法を用いた。グルコシルセラミド合成酵素欠損細胞株GM-95(メラノーマB16)にポリオーマウイルス、ラージTタンパクを安定発現させた細胞株GM-95-PyTを作成し受容細胞として用いた。これにヒトメラノーマ細胞SK-Mel-28 cDNAライブラリーをエレクトロポレーション法を用いてトランスフェクションした。GM3に対するモノクローナル抗体M2590を反応させた後、ヤギ抗マウスIgMをコートしたプレートに対してパニングを行った。Hirt抽出、トランスフェクションの過程を2回繰り返した後、酵素活性測定に基づくSIBセレクション法により、最終的に陽性クローンを単離した。このcDNAは本来本酵素活性を持たない大腸菌で発現させた場合も、酵素活性を示すタンパク質を作ることから、グルコシルセラミド合成酵素をコードしていることが明らかになった。グルコシルセラミド合成酵素は394アミノ酸から成る分子量45万のIII型膜タンパク質であり、データベース検索の結果、既知のタンパク質との間にホモロジーは認められず、新規のタンパク質であることが明らかとなった。
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