全体構造は異なるがリン酸基と結合する共通の機能をもつタンパク質において、リン酸基結合部位が共通のモジュールであることを示すことを目的に本研究を行った。タンパク質立体構造のデータベースより、リン酸基と結合するタンパク質を選び出し、それらのタンパク質のモジュール境界を同定した。同定されたモジュール境界でタンパク質を分割し、モジュールの立体構造を比較した。立体構造の一致度は、二つのモジュールのCα原子を重ね合わせ、対応するCα原子の距離の自乗和の平方根(RMSD)で評価した。その結果、434croとarc repressorのふたつのタンパク質に立体構造が共通で、リン酸基と共通の様式で結合するモジュールが存在することがわかった。どちらのタンパク質もファージがもつ転写制御因子であるが、全体の立体構造は異なる。特にDNAの塩基配列を認識する構造は、434croの場合はヘリックスであるが、arc repressorの場合はストランドとまったく異なる。434croにはリン酸基と水素結合するモジュールが2つ、arc repressorには1つ存在した。434croのひとつのモジュールとarc repressorのモジュールとが両末端にヘリックスをもち、RMSD0.72Åの類似の立体構造をしていることがわかった。どちらのモジュールも、C末端側に存在するヘリックスのN末端の主鎖で、DNAのリン酸基の酸素と水素結合していることがわかった。一般にヘリックスの主鎖のアミノ基は、主鎖のカルボキシル基と水素結合している。しかしヘリックスのN末端側のアミノ基には、水素結合するカルボキシル基がない。このアミノ基がDNAのリン酸基の酸素と水素結合していた。全体構造が異なるタンパク質において、立体構造及び機能が共通のモジュールが存在したことは、これらのタンパク質が共通のリン酸結合モジュールを用いて進化してきたことを示唆する。以上のうち暫定的な結果は発表した。本論文は現在投稿準備中である。
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