1.MAPキナーゼのDominant Negative Mutant遺伝子を導入・発現させた細胞株の作製 MAPキナーゼの変異遺伝子をelongation factor promoterの下流に組み込んだ発現プラスミドを作成し、数種類の細胞に導入した後G418に対する薬剤耐性を指標に細胞を選別した。その結果、分散運動系のモデルであるMDCK細胞で、内在性MAPキナーゼの数倍量変異体が発現している細胞株を幾つか得ることができた。 2.H F刺激によるMAPキナーゼの活性と局在性の変化の解析 1.で得られたMDCK細胞株及び親細胞においてHGF刺激によるMAPキナーゼの活性化に余り差は認められなかったものの、キナーゼ活性を欠損させた変異体や非リン酸化型変異体を発現している細胞株では、HGF刺激による分散運動がやや遅れる傾向を示した。このことから、これらの変異体がDominant Negative Mutantとして働き得る可能性が示唆された。 次に、MAPキナーゼの局在性の変化について蛍光抗体法により解析したところ、(1)MDCK細胞ではHGF刺激によりMAPキナーゼが核移行する、(2)不活性型変異体および非リン酸化型変異体も核移行することからMAPキナーゼの活性及びリン酸化は核移行に関与しない、ことが明らかになった。 3.クロスリンク法によるMAPキナーゼ結合蛋白質の解析 G0期に同調させたSwiss3T3細胞を血清で刺激し架橋剤で処理した後、ウエスタンブロッティングを行ない抗MAPキナーゼ抗体を用いて解析したところ、刺激前に見られた分子量約160および135kDaのバンドが刺激後5分で消失した。このことから、刺激前にMAPキナーゼに結合していた分子量約120および95kDaの蛋白質が、MAPキナーゼの活性化に伴い外れることが示唆された。
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