これまでの解析によって、Interferon-stimulated gene factor 3(ISGF3)のDNA結合サブユニットであるISGF3γのDNA結合領域を欠失させた変異体は、培養細胞内で高発現させることにより、機能制御サブユニットであるISGF3αと優位に複合体を形成し、内在性のISGF3の形成及び機能を抑制することが明らかになった。そこで、ISGF3の生体内での機能をさらに詳細に解析するため、この変異型ISGF3γを発現させたトランスジェニックマウスの作製を行った。 本年度は、変異株ISGF3γをマウスの全組織に高発現させるため、ヒトElongation factor 1α(EF-1α)のプロモーターを用いた。EF-1αプロモーターに変異型ISGF3γを接続したDNA断片を作製し、マイクロインジェクション法によってマウスの受精卵に導入することにより、候補となるマウスを得た。これらのマウスの尾からゲノムDNAを調製し、サザン法およびPCR法により導入した遺伝子を検出することによって、外来DNAがゲノム内に組み込まれたマウスを選択した。最終的に3つの系統のマウスが得られた。これらのうち2系統については、さらに全組織内での変異型ISGF3γのmRNAをノザン法によって検討し、少なくとも1系統については、ほぼ全組織で外来遺伝子からのmRANを検出することができた。さらに、この系統については、尾の細胞と腎臓の細胞において変異型ISGF3γのタンパク質をウエスタン法によって検出することができた。よって、この系統では、変異型ISGF3γが培養細胞内と同様に作用している可能性が予測されたことから、現在、このマウス内でのISGF3の形成阻害について、あるいは解剖学的組織学的な影響についての解析を行っている。
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