上皮細胞間の細胞間接着分子E-カドヘリンの接着部位への集合機構を、細胞骨格系とカドヘリン分子の相互作用という観点から解明することが本研究の目的であった。特に、細胞膜のカドヘリン分子の分散状態から集合状態への分布変化と、アクチン線維を中心とする細胞骨格系の再編制、という2つの動的構造変化に注目して研究を行った。 まずカドヘリン分子の集合過程を解明するため、金コロイド標識を用いた一粒子追跡法で細胞膜上のカドヘリン分子の運動を測定し、光ピンセット法により分子を膜上で操作することにより、約半数のカドヘリン分子が骨格系に結合していることが明らかになった。さらに、蛍光抗体法と細胞骨格を破壊する薬剤による実験から、正常なアクチン線維がカドヘリンの集合に必須であり、集合経路途中にアクチン線維上にカドヘリンの集合体が形成されることを発見した。 そこで、アクチン線維系に結合したカドヘリン分子の挙動を詳細に解析するため、ほとんどがアクチン結合性となるカドヘリンの人工変異体の運動解析を行い、カドヘリン分子が間欠的に100nm/s以上の速度でエネルギー要求性の方向性運動を行うことを観察した。これは、アクチン線維間の滑り運動による可能性が強い。 以上の結果から、アクチン線維の運動を直接測定する必要を感じ、生きた細胞(培養ケラチノサイト)内に蛍光標識したアクチン分子を導入し、細胞骨格系に取り込ませる方法と、その運動を蛍光退色法または蛍光活性化法により測定する装置(2光子励起蛍光顕微鏡)を開発した。今後はこれらの方法により研究を進めたい。
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