本年度は、計画に従ってレチノイン酸によって肢芽内に誘導される遺伝子の探索と解析を行った。肢芽を起源としてディファレンシャルディスプレー法によりレチノイン酸によって特異的に誘導される遺伝子断片の候補を多数単離した。それらの遺伝子断片をクローニングし、塩基配列の決定をしたが、既知の遺伝子との相同性は確認されなかった。さらに、RT-PCR法やin situ hybridization法を用いて得られた遺伝子断片の発現の特異性について解析した。これに関しては、現在実行中である。 また、レチノイン酸の作用の一つである、肢芽中胚葉細胞の接着性の変更という作用を分子生物学的に解析するために、肢芽を起源として細胞接着分子の一つであるカドヘリン群の遺伝子の断片のスクリーニングを行い、多数のDNA断片を得た。これらもin situ hybridization法により発現の部域特異性の解析を行ったところ、興味深い発見様式を持つものが幾つか見られた。これらの遺伝子の発現状態がレチノイン酸によってどのように変化するかを、現在詳細に解析している。 さらに、生体内に存在するレチノイン酸の作用を調べるために、レチノイン酸合成阻害剤を用いた実験を行い、解析結果をまとめ発表した。
|