ウニ胚アリールスルファターゼ(Ars)遺伝子の転写調節領域に結合する2種類の因子に着目し、研究を行った。 1.Orthodenticle-related(Otx)配列認識因子・・・・・Arsの第1イントロン内のエンハンサー活性を担う229bpの領域の転写活性化機構を解析した。ゲルシフトにより、3本の特異的なシフトバンド(I、II、III)が検出された。バンドIは孵化前胞胚期より検出され、徐々に減少し、原腸胚期に消失した。バンドII、IIIは孵化後胞胚期より検出され、原腸胚期まで徐々に増加し、Ars遺伝子の発現変化とよく一致していた。deletion-mutantを用いた結果、229bp内のOtxの認識配列(GGATTA)が2回反復した領域への結合が示され、更に北米産ウニのOtx認識タンパク質に対する抗体は、これらのバンドをスーパーシフトさせた。deletion-mutantとレポーター遺伝子との融合タンパク質を受精卵に導入して求めたエンハンサー活性は、Otx認識配列を消失させると大幅に減少した。単一コピー遺伝子よりalternative splicingにより生じるバフンウニOtx cDNAを2種類クローニングした。以上より、Ars遺伝子の転写活性化には少なくとも2種類のOtx認識タンパク質のOtx配列への結合の切替が必要であることが示された。現在、in vitro転写系による再構成実験により、上記の結果を検証している。 2.Gストリング配列認識因子・・・・・転写開始点上流に点在し、発生過程を通して多量に存在するGストリング配列認識因子の精製を行った。併せてサウスウェスタン法により、合成poly(dG)(dC)をプローブとして胞胚期のcDNAライブラリーより4種類のcDNAをクローニングし、塩基配列を決定した。いずれも、酸性・塩基性アミノ酸の繰り返しが存在し、既知のタンパク質との相同性はなく、新しいDNA結合因子である可能性が高い。このうちの一つはreticulocyte lysateで合成したタンパク質が、poly(dG)(dC)アフィニティーカラムに特異的に結合した。
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