研究概要 |
これまでクローニングして得たI型、II型およびIII型DGキナーゼのcDNAを用いて、脳および網膜から抽出したmRNAをもとにして作製したcDNAライブラリーを低いstringencyの条件でスクリーニングした結果、新しいDGキナーゼアイソザイム(IV型)のクローンを得ることができた。このIV型はこれまでのI型からIII型のものとは異なり、その一次構造中にカルシウム結合部位であるEFハンド構造を欠き、またカルボキシル基端側に4つのアンキリン類似配列を含んでいた。このような構造上の特徴は近年クローニングされたショウジョウバエの網膜変性変異体(retinal degeneration A,redgA)の原因遺伝子であるrdgA-DGキナーゼのものと酷似していることが判明した。さらにこのIV型は核移行シグナルをも含んでおり、核内の情報伝達係に関与することが示唆された。 そこでこのIV型DGキナーゼのcDNAを培養COS細胞に遺伝子導入し種々の性質を調べた。一次構造中にEFハンド構造を持たないことから予想されたように、DGに対するリン酸化反応がカルシウム非依存性であった。またepitope tag(抗原決定基マーカー)を用いた実験では免疫細胞化学的にIV型DGキナーゼの核内局在が証明された。これらの所見はIV型DGキナーゼの機能のみならず、核内におけるリン脂肪代謝の解明にも有意義なものと思われる。
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