神経細胞に多いアクチン結合蛋白であるドレブリンはラット胎児では胎児型が発現しており、神経細胞の移動や突起形成といった細胞形態の変化に関与していると考えられている。成体になるとドレブリンはalternative splicingによって成体型に変換する。成体型ドレブリンのスパインへの局在を確かにするために、共焦点レーザー顕微鏡による観察を行った。シナプス前部のマーカーであるシナプトフィシンとドレブリンとの2重染色をすると、2つの抗体で染まる顆粒状の構造が互いに接しているのが見られた。このことはドレブリンのスパインへの局在が他に例がないほど強いことを示している。次にドレブリンの、アクトミオシンへの作用を調べた。ドレブリンはミオシンのATPase活性を阻害した。これらのことから、成体型ドレブリンはスパインにおいてアクトミオシンの相互作用を制御することでスパインの形態変化に関与し、シナプスの可塑性に一役買っていると考えられる。 我々は、このようにシナプス後部で機能する成体型ドレブリンの発現が、シナプス後部側の発達の指標となると考えた。胎児型から成体型への変換の時間経過を詳しく調べたところ、その変換時期は生体内においても、培養下においてもシナプスが形成されると言われている時期(生後2-3週)に一致していた。培養下においても成熟した神経細胞においてはドレブリンはスパインに局在していた。培養下での成体型ドレブリンの発現やその局在の変化を調べることでシナプス後部の形成の機構を探ることができると考えている。
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