研究概要 |
海馬のcDNAライブラリーから、subtraction-differential hybridization法を用いて、電撃痙攣刺激後、急速に誘導される新しいlmmediate Early Gene(IEGs)を見いだした。これらは電気ショックだけでなく、LTPを誘導するテタヌス刺激やNMDA受容体遮断薬で発現量が調節されることから、可塑性遺伝子と考えられる。rheb(ras-homologue enriched in brain)と名付けた遺伝子は、Ras/Rapファミリーの新しい低分子量G蛋白質をコードし、神経分化やシナプス活動によって遺伝子発現が活性化された。線維芽細胞で過剰発現させると、fociを形勢することから、線維芽細胞では増殖、神経細胞では新しいシナプス形成に至る情報伝達系の一員であると考えられた。別の遺伝子arc(activity-regulated cyoskeleton associated protein)は、スペクトリンに相同性のある新しい細胞骨格調節蛋白質をコードし、mRNA、蛋白質共に海馬の樹状突起層で誘導が認められた。コカインやアンフェタミン投与でも線条体を中心に誘導され、てんかんや薬物依存で見られる異常なシナプス結合の形勢に関与していると考えられた。これらの遺伝子産物の生理機能を明らかにするために、yeastのtwo-hybrid systemを用いて、結合蛋白質のcDNAを海馬のライブラリーからクローニングした。Arc蛋白質と結合するcDNAの翻訳産物は、Arc抗体でArcとともに共沈した。このcDNAは250個のアミノ酸からなる、分子量27,832、等電点4.8の蛋白質をコードし、DNA結合蛋白質と相同性が認められた。Arc蛋白質が樹状突起だけでなく、核内でも発現しており、DNA結合蛋白質との相互作用を介して転写のmodulaterとして機能している可能性が示された。また、Rheb結合蛋白質のcDNAも同様の手法でクローニングし、現在GTP依存性の結合をin vitroで確認中である。
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