カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMキナーゼII)の脳、神経系特異的な発現制御メカニズムを明かにすることを目的として、CaMキナーゼII遺伝子の5′上流領域をLacZ遺伝子につないだコンストラクトを導入したトランスジェニックフライを作成し、解析を進めた。これらのトランスジェニックフライでのLacZ遺伝子の発現を胚のホールマウントin situハイブリダイゼーション法によって調べたところ、転写開始点より上流500塩基対でLacZ遺伝子はCaMキナーゼIIの発現パターンを反映した、脳、神経系特異的な発現パターンを示すことを明かにした。このことは、すなわちこの領域にCaMキナーゼIIの組織特異的な発現を制御する、シスエレメントが存在することを意味している。このシスエレメントを同定するために、上流500塩基対を5つの小フラグメントに分割後、それぞれを放射ラベルし、ショウジョウバエ胚から調製した核抽出液を用いてゲルシフトアッセイを行った。その結果、このうち1つのフラグメントについて強いシフトバンドが認められたことから、この小フラグメント内に組織特異的な転写制御因子の結合する認識配列が存在するものと考えられた。さらに、競合実験の結果、この核内因子の結合は配列特異的であること確識した。このことから、この小フラグメントに特異的に結合する核内因子が存在することを明かにした。 これまでの個体レベルでの発現解析およびゲルシフトアッセイの結果、CaMキナーゼIIの神経特異的な発現に必要な領域をしぼりこむことができた。今後、培養細胞を用いたルシフェラーゼアッセイを併用することにより、CaMキナーゼII転写に必須最小のエレメントを1塩基レベルで明かにし、このエレメントを用いてCaMキナーゼIIの組織特異的な転写制御因子の同定に取り組みたいと考えている。
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