研究概要 |
本研究の目的は、ニューロンの電気生理学的に記録されたAMPA型グルタミン酸受容体チャネルの脱感作と、発現している受容体チャネルサブユニットの関係を明らかにすることである。AMPA型受容体は、GluR1, GluR2, GluR3, GluR4の4種類のサブユニットから構成させており、全てに、flip型、flop型のスプライシングバリアントが存在し、さらにGluR2, GluR3, GluR4にはG型、R型のRNAエディティングバリアントが存在する。さて、電気生理学的にAMPA型グルタミン酸受容体チャネルは、カルシウムイオン(Ca^<2+>)に対し透過性を示さないもの(Type I)と透過型のもの(Type II)の2種類が存在する。そこで、まずこれら2種のAMPA型グルタミン酸受容体チャネルが発現しているニューロンにおいて受容体チャネルの脱感作を計測した。小型のニューロンを対象にパッチクランプ法によりアウトパッチを作成し、ピエゾ素子を用いた高速液交換法により1mMのAMPAを投与し、電気生理学的に脱感作の時定数を測定した。AMPAによって生じた内向き電流Type I受容体、Type II受容体どちらにおいても急速に脱感作した。脱感作の時定数(τ)はType I受容体においては、1.5msecから8.5msecと広いレンジにわたって分散した。一方、Type II受容体のτは1.5msecから2.8msecの狭いレンジに集中した。この異なった種類の受容体が発現しているニューロンを対象に、パッチ電極内にニューロンの細胞質を回収し、マイクロチューブに移して、逆転写遺伝子増幅反応を行い(パッチクランプーRT-PCR法)、発現しているAMPA型受容体mRNAの種類を調べたところ、Type II受容体を発現しているニューロンにおいては、flop型のGluR1とflop型のGluR4のmRNAのみが発現しているのに対し、Type I受容体を発現しているニューロンにおいては、GluR2を含む様々な組み合わせのAMPA型受容体のmRNAが発現していた。
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