骨格筋におけるATP加水分解過程と力発生過程の共役を念頭において、ATP加水分解産物ADP、PiとPiのアナログとして知られるバナジン酸、フッ化アルミニウムがミオシン頭部に結合している単一線維標本の分子形態を二次元X線回折で調べた。硬直張力測定によりADPが、カルシウム張力測定によりPiとそのアナログが、それぞれミオシン頭部に結合していることを確かめながらつくばの放射光施設を利用してX線回折像を得た。カエルとラットの骨格筋から得た化学的スキンドファイバーを用いた。 硬直性クロスブリッジに結合したADPは、14.3nmのミオシン子午反射強度を減弱させた。ミオシン頭部のヌクレオチド結合ポケットの形態変化を反映している可能性がある。バナジン酸とミオシン頭部、ADPの安定な複合体はアクチンから解離した状態で弛緩時のミオシン頭部に特徴的ならせん配置を取っていた。このらせん配置はわずかな修飾によっても容易に失われることを考えると、生理的なPiとADP、ミオシン頭部の複合体に極めて似た構造を取っていることがわかる。フッ化アルミニウムもバナジン酸と同様の効果をもつようであるが、その詳細については今後実験を追加して行う。Piの効果はイオン強度の関係で有意な結果がでていない。検討を重ねる。
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