研究概要 |
IRC系マウス(雄6週齢)のうち、結腸温度37.5℃以上、食塩嗜好(蒸留水と0.9%食塩水を選択摂取させたときの総飲水量に占める食塩水飲水量割合)55%以上、結腸温度測定時の攻撃的行動があるものをAB群、上記のいずれにも該当しないものをNO群とした。AB群の半数を1ケージあたり4匹(AB4群)、半数を1ケージあたり1匹(AB1群)で飼育し、NO群も同様にNO1群NO4群に分けて飼育した。6ヶ月間飼育後NO1群のうちAggressiveとなったものをNO1-AG群、AggressiveとならなかったものをNO1-NO群とした。AB4群は闘争により飼育期間中に全滅したため、AB1、NO4、NO1-AG、NO1-NOの4群について分析を行った。赤外線センサーによる行動量測定の結果、Rearing、LocomotionともにAB1群とNO1-AG群が他の2群より有意に多く、AB1群とNO1-AG群間に有意差は無かった。脳中神経伝達物質と代謝物定量の結果、AB1群の小脳、視床下部、海馬中MHPG, NE, DOPAC, 5-HIAA濃度および、セロトニン代謝回転の指標である5-HIAA/5-HTとドーパミン代謝回転の指標であるDOPAC+HVA/DAが他の3群と比べて有意に高かった。寒冷曝露に対する反応では、NO4群、NO1-NO群で、寒冷による有意な食塩水嗜好の増強が認められたが、AB1群、NO1-AG群には認められなかった。また、食塩水を与えなかったコントロールでは、NO4群NO1-NO群ともに寒冷下で結腸温度の低下が認められたが、AB1群とNO1-AG群では低下傾向はわずかであった。以上の結果は孤立飼育によるAggressiveと先天的なAbnormalが生理学的に異なる可能性を示唆している。新生仔のAbnormal発生率については、4週齢現在、行動のみの観察ではABマウスとNOマウスの組み合わせの違いによる差は認められていない。成熟後上記と同様の検討を行ない、さらに第2世代以降の観察を続ける予定である。
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