本研究では、FESの臨床応用のための生体工学的基礎を確立するために、神経・筋系の電気刺激応答特性の計測と解析、ならびに、そのモデル化と制御法に関する以下の検討を行った。 1.異なる特性を有する速筋及び遅筋の刺激周波数-張力特性を測定し、それらの差異を解析して、FESシステムの制御能力の向上を図るとともに筋特性を考慮した刺激変調方式を確立するための考察を行った。これより、パルス振幅変調と周波数変調を組み合わせて利用する制御方法の有用性を示唆した。 2.FESにおいて、刺激データの作製・修正や、再建動作のシミュレーションを行うこと等を目的として、電気刺激を入力する筋系のモデル化を進めた。特に、筋の刺激周波数-張力特性によりモデルの一部を記述し、その基本的なモデル化を行った。次に、構築した筋モデルのシミュレーションにより、電気刺激による近似的な筋応答を出力可能でありながら、過去の随意運動のモデルに見られるような複雑さを簡略化でき、かつパラメータが取り扱い易いといった利点があり、臨床応用への展開を期待できることを示した。 3.姿勢を保持するための閉ループ制御機能を有する実験的FESシステムを構築し、電気刺激による神経筋骨格系の応答計測を通して、閉ループ制御アルゴリスムの基礎的な検討を行った。ここでは、パルス振幅変調により動作を再建し、パルス幅変調により姿勢保持の閉ループ制御を行う方法を提案し、健常者の手関節角度制御実験を通して、その有効性を確認した。 4.現在のFESシステムの課題の一つとして、システムの操作性の向上が挙げられることから、その制御命令として、あらゆる患者が利用可能な舌動作について検討を行い、原理的な可能性を確認した。
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