研究概要 |
・細胞培養系による軟骨細胞の応力応答 人正常関節軟骨より軟骨細胞を採取し,高密度単層培養を行った.培養液環境(粘度0.7mPa・s,37°C)にて,コーンプレートタイプビスコメータによりせん断応力負荷試験を行った.せん断応力1.7Paの条件において,IL-1α,IL-1β,TNF-α,IL-6をELISAで解析したが,最も顕著な発現が認められたのはIL-6であった.それは1時間後と24時間後でそれぞれ無負荷の対照と比較し4倍と10倍の増加を認めた.OA関節軟骨細胞にIL-6の発現が報告されており,OAにおいてせん断ストレスが重要な因子であることが推察された.当初培養液の粘度条件を変化させることによる応力応答の変化の観察を計画していたが,ヒアルロン酸添加による約20倍の粘度増加に対し,細胞がディッシュ底面から剥がれる現象が起き,さらに検討が必要とされる. 組織培養系によるシミュレータの開発 2基の油圧シリンダーにより大腿四頭筋の張力と屈曲を模擬する膝蓋/人工大腿関節シミュレータを構築した.歩行等のシミュレーション条件を決定するために,高解像度CR像を用いた人工膝関節のパターンマッチング動態解析ソフトの開発を行っている. 摩擦状態の制御に関する基礎実験として,軟骨と人工材料の摩擦系における潤滑液中への関節液成分の添加の影響を観察した.各成分は潤滑モードに依存した役割を有し,ヒアルロン酸の増粘効果や蛋白成分とリン脂質の境界潤滑膜形成などにより摩擦状態の制御がある程度可能であることを確認した.
|