まず、成熟ラットおよび新生児ラットから神経細胞と心筋細胞の分離を行った。神経細胞は脳から、心筋細胞は心臓から酵素処理によって分離した。コントロールとしては皮膚から分離した繊維芽細胞とL細胞を用いた。両細胞とも安定して分離できる手技が確立できた。 次に、得られた細胞と高分子培養基材との相互作用を調べた。分離した細胞を各種高分子基材上で培養し、細胞の付着や伸展を観察した。高分子基材の表面性状との関係を調べたところ、繊維芽細胞やL細胞について以前得られていた結果、すなわち表面接触角が70°付近の材料に最もよく付着するという傾向と一致することがわかった。また、心筋細胞については非付着性表面上では肝細胞などと同様に3次元的なスフェロイド形状を示すことがわかった。これは心筋細胞が本来3次元的に配置しているためと考えられる。 さらに、細胞内LDH量およびグルコース消費量を測定したところ、他の細胞に比べて心筋細胞は増殖しにくく、グルコース消費量が旺盛であることがわかった。このことから、通常の培養条件では長期の培養が難しいことが示唆されるため、培養条件の改良も必要であると考えられる。 来年度以降は高分子基材表面の改質を行い、細胞の興奮状態を検出できる培養基材の開発をめざしたい。
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