臨床応用可能な体内埋込型全人工心臓の実現のために、エレクトロハイドロ-リック方式全人工心臓の高効率油圧アクチュエータの開発を行った。主に、駆動用ブラシレスDCモータの改良および油圧ポンプである摩擦ポンプの流路断面寸法変更による効率改善を行った。ブラシレスDCモータは、ロータマグネットにネオジウム鉄ボロンの焼結マグネットを用い、外径70mm、3相4極24突極のモータを新たに設計した。これにより、使用回転域1000〜2500rpm、トルク域500〜1000g・cmにて80%の効率を有した人工心臓専用組込ブラシレスDCモータの開発が図れた。摩擦ポンプに関しては、直径60mm、羽数40のインペラを用い、その周辺部の流路断面寸法を10x8(mm)〜18x12(mm)の間で変化させた6種類の摩擦ポンプを作成し、評価することによりその最適化を図った。その結果を基に、流路断面寸法14x10(mm)、一方向回転時、揚程150mmHgにて最大流量28L/min、最大効率31%の摩擦ポンプを開発した。開発したモータと摩擦ポンプを用いて外径80mm、厚さ68mmの油圧アクチュエータを作成し、ダイアフラム型血液ポンプと組み合わせ全人工心臓を組み上げ、In vitro、In vivo評価実験を行った。In vitro評価実験では、左心後負荷100mmHg、右心後負荷20mmHg、左右心前負荷10mmHgの条件にて、水を用いた駆動評価実験を行い、最大左心拍出流量8L/min、最大効率12%の結果を得た。In vivo評価では体重50kgの仔牛に本全人工心臓を植え込み、6時間以上にわたり循環維持を行い、アクチュエータ表面の温度上昇を観察した。その結果、アクチチュエータ表面における温度上昇は4℃以下であり、全人工心臓用アクチュエータとして十分な性能、効率を有したアクチュエータの開発が行えたこと確認した。
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