研究課題/領域番号 |
07801006
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
細田 典明 北海道大学, 文学部, 助教授 (00181503)
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研究分担者 |
今西 順吉 国際仏教学大学院大学, 仏教学研究課, 教授 (70000594)
沼田 一郎 北海道大学, 文学部, 助手 (20261258)
藤井 教公 北海道大学, 文学部, 教授 (70238525)
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キーワード | 輪廻 / 生死 / 業 / ウパニシャッド / 原始仏教 / 阿含 / ニカーヤ / アートマン |
研究概要 |
古代インドにおける世界観について、その原理が古ウパニシャッドでは一般にブラフマンによって代表されるが、ヤージュニャヴァルキヤの思想について検討した結果、原始仏教との類似点を具体的に指摘することが出来た。すなわち、Brhadaranyakopanisad 3,8と Digha-Nikaya の Agganna-sutta(及びその対応漢訳)の比較である。両者は語句の上での一致が見られるばかりでなく、原始仏典においては「法」が原理となって、業思想によって世界の展開を説明している。しかし、両者の視点が正反対であり、古ウパニシャッドでは唯一なるものに帰納していく点が、原始仏教では世界がいかに展開され「苦・無常」であるのかという点が問題となっている。 第二に、輪廻思想におけるその主体の問題について、古ウパニシャッドでは一般にアートマンによって代表されるが、原始仏教では「無我」の立場から輪廻の主体を説かず、唯識仏教に至るまで議論されることになる。そこで、原始仏典の中から Majjhima-Nikaya の Alagaddupama-sutta(対応漢訳『阿梨〓経』)を取り上げ、この問題を検討した。「毒蛇の比喩」は仏典では欲望の喩えであり、原始ジャイナ聖典も同様であるが、この経ではアートマンの喩えであり、それを否定するのではなく、正しく把握することを説き、輪廻の主体が不可説であるのは、誤った認識に導くためである。そして「欲望→慢→見」という順序で輪廻の原因を分析し、固執の否定を強調すべく大乗仏典にまで引用される「筏の比喩」が併せて説かれる。 世界が苦しみであり、輪廻の原因が欲望に基づくという認識は古ウパニシャッド以来のものであり、輪廻思想の問題は、従来両者には思想的関連はないとする説に再検討を促すものであり、本年度の研究実績として上述の二点を具体的に指摘し、研究発表を行った。
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