本研究の主たる目的は、「音声知覚研究における学習パラダイム」という新たな観点から、第2言語として日本語を学習する際の音声獲得(学習)過程を記述分析し、音声学習の階層的・時系列的構造を明らかにすることであった。本年度得られた主な成果は以下のとおりである。本研究は理論的研究と実験的研究からなる。 1.理論的研究 研究計画の最終年度にあたり、第2言語音声知覚学習に関するこれまでの研究の問題点を整理、「音声知覚研究における学習パラダイム」ほか、音声知覚・学習研究において今後有効と考えられるいくつかの視点を提起した(山田・山田、1996)。 2.実験的研究 アメリカ英語、中国語を母語とする外国語話者による日本語特殊音韻の知覚学習過程を題材に、比較言語的な観点から第2言語学習における音声知覚獲得過程を記述分析した(例えば、山田、1997)。本年度は新たに中国語話者を対象にした実験を実施、米語話者との差異を明らかにした。日本語拍感覚および特殊音韻の学習に最適な訓練刺激構造に関しては、文化的背景や個人的要因ばかりでなく、訓練の進捗状況等時間的要因によって最適構造が変化することが明らかになった。なお、本研究における実験は、関係諸学会のガイドラインに従い、被験者の同意の下で、安全性に十二分に配慮して実施された。 3.今後の課題 今後さらに、アメリカ英語、中国語以外の諸語との比較言語的研究を進めていく必要がある。また、個人差等による獲得過程の相違、知覚学習と発声学習の関係についても、さらなる実験的分析が必要である。また、可搬型音声訓練システムの開発については、ネットワーク対応を実現するための研究開発環境を現在計画中であり、訓練システムの実用化も今後の課題となった。
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