1.4ヶ月児52名とその母親を対象に、1年間に渡る2回の家庭訪問及び2回の実験室観察を行った。子どもの気質・行動特徴の捉え方や期待と母子の間の相互交渉における情動の制御能力の発達との関連を検討した。この主幹研究以外に、一歳半以降の子どもの気質・行動的特徴に対する母親の捉え方の傾向を知るため、48名の幼児の母親に子どもが1歳半、3歳半と4歳半時に質問紙で調査をし、また幼児が1歳半時に実験室で幾つかの場面における子どもの情動的反応の観察をも行った。いずれの研究においても、幼児の気質・行動特徴(個性)に関する母親の捉え方はICB、Infact Behavior Questionnaire、Toddler Behavior Assessment Questionnaire、Children's Behavior Questionnaire 及び関連する質問項目に対する母親の答えに基づいて検討した。また、実験室観察のビデオ記録資料は評定法及び微細分析法で分析した。 2.主幹研究において、気質特徴の中では「なだめられ易さ」がもっとも得点が高く、以下は「注視・注目」、「微笑み・笑い」、「活動性」、「制限に対する不機嫌」の順で、最も低いのは「新奇性に対する慣れ」であった。母親は概して自分の子どもをなだまり易いと捉えている。「活動性」が高くかつ「なだまり難い」子どもは8名(15%)、また「活動性」が高くかつ「制限に対して不機嫌になり易い」子どもは5名(9%)であった。動き回るようになった時、これらの子どもは養育者にとって比較的扱い難いと感じる可能性があり、また、養育者の禁止や制限を受けやすいと仮設し家庭訪問や実験室での観察の結果からも裏付けられた。気質特徴による分類に基づいて、それぞれのタイプの子どもの相互交渉における情動制御の特徴や養育者の行動特徴との関連についてさらに解明される可能性が期待できる。1歳半以降の研究においても幼児の気質特徴の連続性が示唆された。
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