人間行動遺伝学によって一般知識や外向性などの適性に高い遺伝規定性があることから、数学の問題解決という知的課題を、教授者や仲間関係の中でどのように学習してゆくか、その学習プロセスの中で遺伝要因がどのような役割を演じているかを、一卵性双生児の学習行動とその成果を比較することによって検討した。 実験は2回にわたって行われた。 実験1 中学2年生の8組の一卵性双生児を対象に2日間8時間の学習教室。異なる4種類の学習スタイル(個別問題解決、共同問題解決、個別問題訂正、教師との1対1活動)を双生児きょうだいは独立に経験させ、それぞれへの学習態度を質問紙法によって訪ねた。その結果、いくつかの学習態度(気楽、緊張、達成、弛緩、有能感)で、偶然よりも高い確率で、双生児きょうだい間の態度に一致が見られた。 実験2 小学6年生から中学3年生までの双生児20組を対象に、個別学習と共同学習をそれぞれ4日間8時間行う。ここでは実験1のような質問紙による態度評価だけでなく、より詳しく行動観察と、何組かについて血液検査によるいくつかの神経生理学的形質の遺伝子型の診断も行った。また新奇性探求をはじめとする新しい性格検査、知能検査も実施し、それらの関係を分析してゆく予定である。
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