研究の初年度として、必要な資料収集を行いながら、先行研究についての整理を行った。 多文化主義については、近年極めて多くの研究があるが、この点を具体的にポピュラー音楽および音楽産業に焦点をあてて行われた研究はそれほど多くはない。従来の研究のなかで、特に、Roger Wallis and Krister Malmによる一連の研究(このうち初期の研究成果であるBig sounds and small peoplezが昨年岩村沢也氏他によって翻訳された)や、Richard A.Peterson and Bergerによるヒット曲と音楽資本の新規参入についての研究などを中心に、先行研究についての整理を試みた。これらの文献は、私の研究目的でもある文化伝播に関する市場と非市場システムの双方に関わり方についていくつかの示唆的な問題提起がなされている。しかし、異文化間の伝播という課題については必ずしも明確な視点がなく、この点についてはGeorge Lipsitzらのカルチュラル・スタディーズが参考になったが、逆にカルチュラル・スタディーズでは社会科学的な分析に弱さがあることもはっきりしている。したがって、これら両者を相互に補いつつ新たな視点を提示する必要がある。これらの点をふまえつつ、マルチメディアとインターネットによるあらたな多文化的ななかで音楽産業と文化伝播についてさらに次年度以降研究を続けることになる。 なお、以上については、「研究発表」にあるとおり研究発表が予定されている。
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