農村女性問題については、近年少しずつではあるが研究が進んできた。しかし、その多くは、現状分析に留まりがちであり、なおかつフェミニズム理論を取り入れたものは多くない。本研究では、農村の女性が主体的に役割を十分に果たせないのは、農村の仕組み、農業の地位など、制度かつ現代社会の問題が大きく関っていること、現在行われている施策の中では、家族経営協定、都市農村交流などの事業の活用について研究した。特に、農村、農業の女性問題を再度、歴史的、政策的流れの中でフェミニズム視点を取り入れて再考察した。フェミニズム視点から見直した時に、資本主義による、女性労働、農業労働の差別問題等、マルクス主義フェミニズム等の視点である。一方、イエの問題ではラディカル・フェミニズムの視点が重要であるが、農家女性のリプロダクション(性と生殖)については、後継者問題とも絡んで、重要であるにもかかわらず、研究がほとんどない。特に、最新医学も関与してくるので、分野を越えた共同研究が待たれる。 イエと労働、後継者・花嫁問題と関連して、研究代表者が注目したのが、近年、国の進めている家族経営協定である。先進的であり、現在も中心的な役割を果たしている群馬県と北海道で聞き取り調査を行った。その多くは、形骸化しているとも言われがちであるが、実際調査してみると、そのような面もあるが、農家の家族関係の民主化に貢献してきたし、当該家族員も認めており、それゆえ、浸透している事例も多かった。これらは、女性だけでなく、家族員の意識改革をも促し、家族農業経営のありかたを変化させる要因をはらんでいた。 都市農村交流では、やはり先進的に行われている北海道を中心に調査した。女性が主体的に導入したいと考えたところでは、女性労働が加重ぎみ関らず、主体的に活動していた。 このような動きの中で、女性の活躍する場が増加し、農業委員となる女性も出てきた。今後は、社会の場で女性が主体的に活躍できる制度を作り出すことであり、それには人数を明記したクオ-タ性の導入が望ましい。
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