最終年度は、次のような研究業績を上げてまとめた。 1.「精神薄弱」という用語の意味論的考察をする。 「精神薄弱」という用語が、その実体を適切に表現しているかどうか、学術的にその妥当性が問われることには重要な意味がある。そのことが、「精神薄弱」者福祉行政を推進していくうえでひとつの鍵をにぎっているといっても過言ではない。「精神薄弱」という用語から受けるイメージ、語義、語感が、ややもするとその実体への、錯覚、誤解、偏見を招き、その医療、教育、福祉行政の推進をおくらせてきた要因のひとつになっていたとも推測される。 2.知的障害(精神薄弱)児・者の親へのアンケート調査結果に関する統計処理をすることによって、分析・解析をし、考察を展開する。調査票の回収数は1840、有効回答数は1836だった。まず、これらを単純集計し、そのうち有効なものをクロス集計した。そして、知的障害者の親がいだくスチグマの感情について要因分析を試みた。その結果について、たとえば「社会を冷たく感じた事は」64.7%、「今まで社会生活で肩身の狭い思いは」68.6%、「今まで社会生活で不愉快な体験は」75.5%などとなっており、予想した以上の強いスチグマ感が見られた。 3.「精神障害者の家族」への前調査(前回の科研費によるもの)との比較研究および考察をする。その結果はおおむね「知的障害児・者の家族」のほうが、スチグマの感情を強く抱いていた。 4.以上の結果および考察に関する報告書の作成をする。
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