本年度は前年度に引き続き、各藩の武芸教育状況を調査した。『日本教育史資料』の各藩資料および実地調査により得られた資料を検討し、武芸教育に関係する記述を摘出した。各藩の調査がかなり進んできたので、武芸教育制度化の類型化ができないか、検討しつつある。本年までの調査の結果、以下のことが明らかになった。 1.多くの藩で文武両道が教育理念となっていたこと。 2.文武両道を教育理念とした藩でも、武芸を藩校の教育科目に取り入れた藩と、取り入れていない藩があること。 3.儒学に教員については、儒者・教授・助教など職名が分化しているのに対し、武芸の教員については剣術・槍術等の区分はあるが、武芸師範の職名の分化はほとんど起こっていないこと。 4.武芸については世襲的な武芸師範家が存在したと考えられること。 武芸師範家の実体の解明は、本研究の大きな課題であるが、これまでの研究で(1)藩校成立以前から存在していたこと、(2)彼らはしばしば馬廻り・小姓などの藩職制上の職位を有していたこと、などが明らかになりつつある。また、(3)武芸教育制度化=学校化は幕末期に急激に進行したように思われる。
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