本研究は江戸時代の、(1)文武両道思想の成立と展開、(2)武芸師範制度の成立と武芸師範の待遇、(3)武芸学習奨励政策の展開、(4)武芸教育方法の変遷、(5)幕府の武芸吟味制度の成立と学問吟味への影響、(6)幕府・諸藩の武芸教育施設、(7)洋式軍制の採用と武芸教育の革新などの諸点を明らかにし、武芸教育史の解明を目指す研究の一部である。 文武教育体制の整備は、教員の身分や待遇と深く関係している。武芸師範制度は、武芸師範が武芸師範に指定される以前および以後の職位・家督の相続に伴う職位の変動・武芸師範以外の本職を有する場合の本職勤番の扱い・武芸師範であるための出費に対する補償等について明らかにし、儒学教師との異同を検討した。武芸教育施設に関しては、武芸師範家が自邸内に設けた武芸教育施設・幕府や藩が設けた武芸教育の専用施設・藩校内に設けられた武芸教育施設について設立にいたる事情や運営の実態について明らかにするとともに、儒学の家塾や藩校との異同について検討した。 各藩の状況には相当の違いが認められたが、文武の総合学園化が徐々に進行し、文武教師の身分も統一化される傾向が認められた。
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