本研究の目的は、わが国の政府開発援助組織(JICAなど)に所属する「専門家」集団の、開発援助に関する知識体系とその社会文化的背景を解明することにある。本研究では、「専門家」の開発援助に関する知識体系を2つのレベルで調査する。第1のレベルは、「専門家」の「普遍的」な枠組みの知識である。また、第2のレベルは、このような「普遍的」な知識の背後にあり、個人的な経験から生まれた私的な知識である。このような視点から「専門家」の知識体系についての認識を深め、現実の農村開発をめぐる判断決定や実践行為を「専門家」の内側から理解し、第三世界に展開する開発現象のより全体的な解明をめざすものである。 第一年目にあたる平成7年度は、上で示した第1のレベルを中心に調査・分析してきた。7月に調査打ち合わせ(調査方法についての詳細な検討)を行い、8月から調査開始(東京方面を中心とした文献資料収集、「専門家」集団との折衝、および第1レベルの知識を中心に聞き取り調査)、そして2月に中間報告会を開催し、調査上の問題点を検討してきた。 今回の調査でわかってきたことは、以下の通りである。 (4)第1のレベルの知識は、世銀などの「普遍的」な知識の特徴である新古典派経済学と政策科学の枠組みに大きく基礎づけられている。 (2)しかし、その程度は「専門家」の年齢と教育歴(国内か欧米か)によってばらつきが大きい。 (3)この意味で、第1のレベルの知識は第2のレベルのそれとの関係で理解する必要が明確になった。これは次年度の研究に引き継がれることになる。
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