本研究の目的は、わが国の政府開発援助組織に属する「専門家」集団の、開発援助に関する知識体系とその社会文化的背景を解明することであった。ここでは、「専門家」の「普遍的」な枠組みの知識と、その背後にある個人的な経験から得た知識に着目しようとした。そしてこれらの検討をとおして、「専門家」の側からの第三世界における開発現象の理解を目指した。 今年度は、これらの目的のために、まず開発現象の理解に向けた理論的枠組みの検討を行い、開発現象への視角を、開発言税、知識の偏在性と力、ハビタス、開発組織、開発現象を語る語りの場といったものに設定した。そして、その中で援助組織の知識と文化の意味を検討した。 さらに、これらをふまえて「専門家」への聞き取りを行った。しかしながら、様々な技術的問題から、多くの「専門家」に聞き取りを行うことはできなかった。ここでは、インドネシアの開発プロジェクトに関わっている援助組織についてある程度の情報収集とNGOの活動家のライフヒストリーを得ることが出来た。ここで判明したことは、やはり開発援助の基本的知識は欧米の開発専門家の「普遍的」知識にきわめて多く依存していることが読みとれた。 今後は、このような事例研究を重ねることで、援助専門家と開発対象である村人との間の知識と文化の偏在を全体的に把握してゆきたい。
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