1.『大日本古文書』正倉院編年文書の中から書状を抽出して、書き出し・書き止め文言、日下の署名、宛所、紙背、封、礼紙などの項目について、パソコンに入力して書状データベース(1)を作成中(未完)。正倉院文書中の書状を内容によって分類すると、請経・請本などの請求、経師等貢進、写経依頼、不参解、写経所事務、献上・進上・送り状、その他に分けられる。差出側・受取側少なくとも一方は、組織内の個人で、純粋な書状とは言えず公用の書状である。緊急・臨時の場合や規定以外のケース、ていねいにする場合に出されている。即ち、公式様文書を補完する公用の書状という点に特徴がある。また、書式等をみていくと、啓・状・通などの書状形式のものと、解・牒などの公文書形式のものがある。宛所には、「尊」「殿門」など唐代の書儀にはない尊称が用いられている。これらも公用の書状という性格に由来するものか。2、『大日本古文書』正倉院編年文書の中から、封のある文書を抽出して1と同様の項目について調査記録して、書状データベース(2)を作成中(未完)。正倉院文書で使用されている封は、切封と結封である。封が啓・状などの書札様文書のほか、解・牒など公式様文書にも使用されていることが注目される。ただし、解・牒も個人が発給主体となっているものが多く、書状的といえよう。3、万葉集や漢詩文集からも、書状を収集し、書状データベース(1)に入力中。正倉院文書の書状と異なり、使用の書状であり、上所・脇附などに唐の書儀の影響が強く感じられる。4、書状の紙、折り方、封の仕方、礼紙の用い方など書状の形態について、宮内庁正倉院事務所から購入した正倉院文書の写真版(続々修の途中まで)と、『正倉院古文書影印集成』『正倉院古文書目録』や正倉院文書複製などを使用して、調査記録中。これら書状の形態については、『大日本古文書』では記載が洩れているものが多いことを確認した。
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