日本列島の沿岸部と島嶼部には、おびただしい数の地名が文字表記とは無縁に存在することが、研究を開始する以前に行った予備的な調査から予測された。したがって、3年間の研究期間にどれだけ多くの、しかも広がりをもった地点を調査できるかが、最大の目標であったが、関東・東海地方をのぞけば、目標は達成できたと考えている。海岸部を問題にするので日本海側・太平洋側・瀬戸内海域・東シナ海といった、日本列島を囲む海域を網羅することも重要な留意点であったが、この点は充足している。 この研究成果報告書では、調査地点計38地点の海岸部地名の全容を資料として巻末に提示し、ここから読み取れる海岸地形の呼称に焦点をあてて、次のような分析を行った。 海岸地形の呼称に関わる地域性と共通性 1 湾入部分……浜・浦・窪・湾・澗・タンポ・ブ- 2 突出部分……崎・岬・鼻・トガイ・ダツ 3 岩礁…………島・磯・石・岩・瀬・根・曽根・碆・クリ・ビジ (1) 分布域の広いもの……島・磯・石・岩・瀬 (2)分布域が広くないもの……根・曽根・碆・クリ・ビジ 岩礁を意味する方言-類義語クリ・ハエ・セ・シ・ソネ・ネの検討- 1 分布 2 類義語の検討 (1)クリ(2)ハエ(3)セ(4)シ(5)ソネ(6)ネ 3 古文献の意味記述 4 結論 さらに、研究期間中に誌上発表した「海辺の地名」を併せて掲載した。内容は次の通り。渚にちりばめられた地名たち/地名を育んだ人々/命名視点と命名心理/地名の普遍性と地域性
|