本年度の作業は、主として前年度の継続作業と最終年度として研究の取りまとめを行った。まず、詩人で、豊後佐伯藩士中島子玉の全著書の所在確認と、その閲覧および複写を開始した。そして大分県佐伯市教育委員会の管理下にある子玉の自筆稿本群(佐伯市立図書館)と、九州大学中央図書館及び国立国会図書館等の公共図書館や大学図書館で所蔵されるものを相当量調査し複写した。子玉は、二十代前半を江戸昌平黌の留学に当てたが、その間を裏付ける資料を渉猟し、整理した。近世後期の佐渡出身の昌平黌書生による文献史料を佐渡の個人宅及び佐渡高校舟崎文庫において調査を行った。 これらに基づいて、子玉による編著の校訂を終え、その周辺で当時書生であった数人の著作調査へと視野を広げながら、書生たちの動静を中心とする文政期昌平黌の総合年表に着手した。終年、調査を重ね、大量の佐伯藩政史料の解読を持続しながら、子玉の文学的営為との関連を考察した。
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