研究概要 |
申請者は、(1)湾岸戦争における武力行使の容認決議の採択、(2)クルド人救援のための介入、(3)平和維持軍への限定的な武力行使の許可の三つの事例に関する基礎的な研究を一応取りまとめて、論文の形で発表している。この三事例に加えて、(4)旧ユ-ゴにおいて国際人道法の重大な違反を犯した個人を訴追するための国際裁判所の設立(決議808)、(5)ロッカビ-事件におけるリビアへの制裁の決定(決議748)が提起する国際法上の問題を分析・検討し、国際連合にとっての意義を明らかにすることが課題である。本年度においては、これら5事例に関する資料及び文献、さらには冷戦後の国際連合特に安全保障理事会の役割・機能に関する資料・文献等(国際連合の議事録等の文書、国際シンポジウムの議事録等、その他の論文・書物・資料集等)を収集・整理するとともに、それらの検討を進めてきた。しかしながら、この研究を進めるに伴って、憲章第7章、さらには国際連合憲章自体の性格をどのように理解し、その解釈理論をどのように設定するかが、中心問題の一つになっていることがますます明らかになってきた。実際、上記の私の論文も、解釈理論を提示した私の単著『国際組織の創造的展開』に依拠して基本的には理論構成している。その意味で、本年度に進めてきた研究をある程度まとめて英語で発表するためには、本研究を応用・適用とすればその基礎にあたる解釈理論自体を英語で発表しておく必要性を痛感してきた。このような事情から前記単著の翻訳・加筆の作業を並行して進めることにしたが、出版の機会に恵まれたため、急遽、かなりの時間をこの翻訳・加筆の作業に投入することに方針を変え、完成させることができた。1996年の中頃までには、オランダの出版社(Kluwer Law International)から、Evolving Constitutions of International Organizations, Pp.285. Index. として出版される予定である。
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