1 民事訴訟法学会における報告 1995年5月に東洋大学で開催された民事訴訟法学会において、乙類審判事項、とくに、遺産分割事件を取り上げ、これに関する従来の文献・判例を検討する報告を担当することにより、従来の文献・判例を整理することができ、今回の研究の出発点とすることができた。 2 家事事件の実務に関する研究 遺産分割事件を中心とした家事事件の処理について、実務家と面談の上、実態調査を実施した。東京、大坂、福岡等、それぞれの家庭裁判所で工夫が見られるが、従来、「家事事件の当事者主義的運用」として紹介されてきたものをさらに分析する必要を解明した。そこでは、特に、どのような事項について、どの程度まで訴訟に近付けた取り扱いをするべきかという新たな分析軸(これは機能的考察と事項的考察という分析視角である)を提示することができた。しかし、家事審判は、非公開であり、記録に接することができないので、その全貌を理解することは困難である。今後も実務家による論文等も参考にした上で調査を続ける必要がある。 3 外国法との比較研究 ドイツ法との比較法研究を中心に行ったが、特に、ドイツにおける結合事件の柔軟な取り扱いが日本法にとっても示唆に富む点を解明した。しかし、裁判制度(管轄など)に違いがあり、日本法にどこまで取り込むことができるかは、なお検討を要する 4 今後の計画 乙類裁判事項に関する邦語文献を引き続き調査分析するほか、面談調査をとりまとめ、比較法研究を深めたい(特に、アメリカ法との比較も補足として加えたい。)。研究の成果は、山口大学経済学部の紀要に公表の予定である。研究期間の二年目の後半はこうした公表準備にあてたい。
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