1 家庭事件の実務に関する研究 家庭裁判所の重要性は近年増しつつあるが、その権限は創設以来40年余り、変化が見られない。他方で、家事事件について「訴訟は地方裁判所で、非訟(調停・審判)は家庭裁判所で」という図式にも疑問が提示されている。 筆者は、従来「家事審判の当事者主義的運用」とされてきたものを分析する必要性を指摘してきた。すなわち、家事審判において、対席審理ないし文書提出義務、記録の閲覧謄写等を認めるとしても、どのような事項について、どの程度認めるかについて更に検討する必要がある旨を明らかにしてきた。ここで、平成8年6月に新民事訴訟法が成立し、対席審理・文書提出義務の内容など『民事訴訟の当事者主義』そのものが変容した。これを踏まえて、「家事審判の当事者主義的運用」についても見直しが迫られることとなった。非訟手続においても、争点・証拠の整理手続を導入すること、拡充された証拠収集手続を取り入れることなど、新法を取り入れる可能性を探ることができた。 2 外国法との比較研究の進展 引き続き、ドイツ法との比較法研究を中心に行った。「家事事件」とされている事件の範囲を分析した。これにより、社会的に同一だと把握される事件について、家庭裁判所で一体的に処理する必要性及びこれに伴う問題点とその解決方法について、日本法への導入を検討する比較法研究を行うことができた。 3 成果の発表 本研究の成果は、山口大学経済学部経済法学科の研究会で報告を行った。本報告を基にして、山口大学経済学部の紀要に論文を発表するため現在執筆中である。
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