1家事事件の実績に関する研究 今回の研究における問題関心は、わが国における家事事件の処理、とりわけ乙類審判事項の扱い方にあった。乙類審判事件は非訟事件であるが、争訟性が強く、訴訟事件としての性格を併せ持つ。したがって従来、実務でも「家事審判の当事者主義的運用」として、訴訟事件と同様の取り扱いを部分的に取り入れてきた。今回は、乙類審判事項の中でも財産を巡る争いとしての性格が強い遺産分割事件を取り上げて研究対象の中心とした。 遺産分割事件を中心とした家事事件の処理について、実務家と面談の上、実態調査を実施した。東京、大阪、福岡など、それぞれの家庭裁判所で様々な工夫が見られるが、当事者主義的運用をさらに分析する必要性を解明した。そこでは、とくに、どのような事項について、どの程度まで訴訟に近づけた取り扱いをするべきかという新たな分析軸(これは機能的考察と事項的考察という分析視角である)を提示することができた。乙類審判事項に関する邦語文献を引き続き調査分析したほか、面談調査をとりまとめ、比較法研究を深めた。研究の成果の一部は民事訴訟法雑誌42号に公表した。この論文では、遺産分割を始めとして、各類型ごとに乙類審判事項の特質とその取り扱い方を論じている。 2外国法との比較研究の進展 ドイツ法との比較法研究を中心に行ったが、とくに、ドイツにおける結合事件の柔軟な取り扱い(訴訟・非訟の峻別をせず、事件の類型ごとに異別の手続を採用する取り扱い)が日本法にとっても示唆に富む点を解明した。
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