1、ネパールの政治学者D・R・ダハ-ルとの共著、Nepalese Politics and Political Science:An Overview with a Bibliography(1)を発表した。ネパールにはすでに本格的な政治学が存在し、政治学会も設立されているが、日本ではこのことはまだ全くといってよいほど知られていない。日本の政治学者たちは、多くの場合、西(欧米)を向くか東(日本・東アジア)を向くかであって、南にはあまり目を向けてこなかったし、またたとえ南アジアに関心を示しても大国主義のせいかネパールのような小国にまでは目が届かなかった。これまでネパール政治学に関する情報は、政治学者ではなく文化人類学や言語学といった隣接領域の研究者たちを通して細々と断片的に伝えられてきたにすぎない。こらは日本とネパールの政治的経済的関係の希薄さを考えれば、ある程度やむを得ないことだったかもしれないが、しかし、日本の政治学界が、遅ればせながらも「国際化」を目指す以上、少なくとも欧米諸国程度にはネパールへの関心を示すべきであろうし、またたとえそうではなくても、ネパールの政治と政治学の無視は日本の政治学自身の発展にとって小さくとも悔いの残る失策となる可能性がある。ネパールの政治は、現代政治の重要な諸問題を大部分取り揃えた実験室のようであり、それ自体として興味深いからであり、また、その研究もネパールや欧米諸国において近年ますます盛んになりつつあるからである。この論文では、ネパールのこの未知の政治と政治学の現状報告を試みた。 2、ネパール憲政史関係資料の収集整理を進め、文献目録については東北芸術工科大学または日本ネパール協会のホームページで公開することを検討している。
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