本研究は、急速に高齢化・少子化が進むわが国において、今後どのような社会資本を、どの主体が、どれだけ整備すべきであるかを解明する。われわれの目指す望ましい社会資本整備は、公的年金・健康保健への国庫負担増等から生じる「高齢化の社会的費用」をできるだけ小さくするものである。 従来、高齢者は年齢で区切られ、ひとまとめに論じられてきた。本研究は、むしろ高齢者を取り巻く自然環境や社会システムのなかで高齢者の経済問題を論じた。さらに、これまで顔の見えなかった高齢者を、肉体的・環境的・経済的に異なる生活者としてとらえた。これにより、高齢者の真に求める公共政策が浮かび上がり、高齢化の社会的費用を最小にする社会資本整備を考えるフレームワークを構築することができた。なお、財政面での現在肥大化している財政投融資制度の仕組みと問題点を詳細に検討した。 同時に、社会資本をより広義にとらえ、公的年金や公的健康保険の社会的制度も含めて、望ましい制度のあり方を検討した。公的年金については、従来型の国庫補助依存体質を改め、各人が自己責任による老後の生活設計の下で資産蓄積を進めること、健康保険に関しては、わが国の医療体制そのものを長期的に見直し、地域医療の充実と、高度医療の区分を明確にする方策を論じた。 高齢社会は現役引退後の時間が長期にわたることを意味する。その際、とくに重要となる余暇時間との関連で、米国における国立公園と博物館の二つの社会資本を論じ、望ましいあり方を提言する具体的な事例研究を行った。
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