本研究ではまず、電気通信の経済分析および、産業に関する競争促進・規制政策関連文献資料から、企業間情報ネットワークに関わる専用回線サービスやISDN回線サービスに注意しつつ、料金規制や参入規制などの行動規制が、電気通信産業と経済厚生に与える影響に関するモデル分析を行った。 さらに、それぞれのユーザー企業間情報ネットワークにおける各ユーザー企業の取引費用、情報ネットワークの加入料や回線使用料などの情報コストを考慮し、上述のモデルと接続を試みた。すなわち、規制緩和により、電気通信事業者間にユーザー企業間情報ネットワークに関わる専用回線サービスやISDN回線サービス、またVPNサービスの競争が起こると、それぞれの電気通信事業者がもつネットワークへどのような影響を及ぼし、その結果ユーザー企業が属する産業にどのような影響をもたらされるのかを、ゲーム理論による理論モデルを構築し分析を試みた。 具体的には、1.VPS接続等への規制緩和政策や接続料に関する規制などが、VPSサービス等の市場への新規参入や電気通信事業者間の競争を促進するための条件を吟味した。2.1の競争促進が、それらのサービスのユーザー企業間ネットワークに与える影響を、ネットワーク外部性に注意しつつ吟味した。3.経済合理性に基きユーザー間の情報ネットワークに加入し、それゆえ公衆ネットワークサービスを需要するために、得られる情報レント、情報コスト、取引費用の減少分の間に成立する条件、を明きらかにした。4.3の結果、規制緩和政策が情報ネットワークに加入する企業数の増加をもたらし、それにより財の供給が増え、経済厚生を増加させる可能性があることを示した。これら成果の一部が本報告書の(11研究発表欄)記載の論文である。
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