本年度においては、本研究のモデルを米国の証券市場へ適用し、日米間の証券構造の相違や資本構成の違いを規定する諸要因や今後の変化について分析を行った。米国企業の資金の調達においては、多様な投資家のニーズに合わせて多様なルートが用意されているが、説明義務、格付け、情報開示と自己責任に関するきめ細かな法ルールの存在を条件としている。また、ミューテュ-ファンドの発達、取引手数料の引き下げとデリバティブ運用の増加も資金調達方法の多様化に貢献している。米国企業の資金の運用においては、投資信託やミューテュ-ファンドによる企業選別、格付け機関の評価と機関投資家の積極的関与といった厳しいチェックのもとでその投資が行われている。ストックオプション等による強い動機づけ下の自己株買い戻し制度の活用でフリー・キャッシュ・フローの効率的運用も行われている。資金調達と運用に関する諸条件が米国と異なる日本においては、間接金融優位と投資収益性の劣位が依然として続いているが、投資家のニ-スの多様化とリスク受容能力の向上及びその他の諸条件の変化に加え、取引手数料の低下、株式持合いの解消、メインバンクのチェック機能の低下等も見られ、これらは、日本の証券市場構造と企業金融行動に大きな変化をもたらすと考えられる。 また、本研究の成果を単行本として刊行するための編集や総括も行われた。
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