本研究の大きな課題は、二つの比較視座(産業間-とりわけ自動車との-比較及び国際比較)を通して、日本航空機産業の現状把握と将来性を実証的に分析することにあった。軍需と民需の双方をカバーするとともに、その適切なバランスと相乗効果のあり方を検討し、さらには、歴史的・技術的・政治的経済的諸要因により、今後益々重要となる国際分業体制のあるべき姿の考究をも狙いとするものであった。 これらの前提を踏まえ、平成7年度の具体的な研究計画は次のとおりであった。1)日本航空機産業の現況及び将来性を把握する、2)国際競争力の諸指標・測定尺度の吟味を行う、3)軍需・民需別の諸特徴と将来性を分析する、4)代表的航空機メーカー及び航空機器・素材サプライヤーの予備的な聞き取り調査を行う、5)コンピュータを用い、競争力に関する基礎的データ・ベースを作成する。 以上の研究計画に基づき、今年度は、政府関連機関(通産省、運輸省、防衛庁、科学技術庁)、業界団体(日本航空宇宙工業会)、エアライン会社(日航、全日空)、主要航空機関連メーカー(三菱重工業、川崎重工業、富士重工業、新明和工業、石川島播磨重工業、島津製作所、帝人製機)などへのインタビュー、工場見学、一次資料収集等を精力的に実施した。フィールドワークから得られた原資料は、整理・分類され、数百枚のインデックスカードに落とし込む作業を現在継続中である。こうして一連の活動を通じ、日本航空機産業の現況、将来性、国際競争力、また、軍需・民需別の諸特徴と将来性を、予定通り把握し、一定の知見を得ることが出来た。また、そのポテンシャルと問題点を総合的に把握した。 需要構造が複雑化し、長期的な予測が困難となるにつれ、既存のバウタリーを越える、タスクフォースを主体とした協業とアウトソーシング体制が重要となる。そこでは、明確はルールに基づくリスク・シェアリングやプロフィット・シェアリングが求められ、パートナー同志の共棲と共創が実現される。こうした研究成果は、日本経済新聞、『ビジネス・レビュー』誌、テレビ出演(テレビ東京「シンクタンク」)、講演(科学技術庁、一橋大学経済懇談会)などで発表され、多くの賛同が得られた。他方、研究対象の多面性は、さらに周到なるリサーチ・デザインの吟味を要請しており、競争力に関する基礎データの構築も、その線に沿って平成8年度以降の課題として残った。
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