本研究の目的は、二つの比較視座(産業間-とりわけ自動車との-比較及び国際比較)を通して、日本航空機産業の現状把握と将来性を実証的に分析することにあった。軍需と民需の双方をカバーするとともに、その適切なバランスと相乗効果のあり方を検討し、さらには、歴史的・技術的・政治的経済的諸要因により、今後益々重要となる国際分業体制のあるべき姿の考究をも狙いとするものであった。 これらの前提と研究計画に基づき、政府関連機関(通産省、運輸省、防衛庁、科学技術庁)、業界団体(日本航空宇宙工業会)、エアライン会社(日航、全日空)、主要航空機関連メーカー(三菱重工業、川崎重工業、富士重工業、新明和工業、石川島播磨重工業、島津製作所、帝人製機)などへのインタビュー、工場見学、一次資料収集等を精力的に実施した。フィールドワークから得られた原資料は、整理・分類され、数千枚のインデックスカードにまとめられた。そしてこうした一連の活動を通じ、日本航空機産業の現況、将来性、国際競争力、また、軍需・民需別の諸特徴と将来性を、予定通り把握し、一定の知見を得ることが出来た。また、そのポテンシャルと問題点を総合的に把握した。 需要構造が複雑化し、長期的な予測が困難となるにつれ、既存の組織境界を越える、タスクフォースを主体とした協業とアウトソーシング体制が重要となる。そこでは、明確はルールに基づくリスク・シェアリングやプロフィット・シェアリングが求められ、パートナー同志の共生と共創が実現される。こうした研究成果は、研究報告書に報告されているように様々な出版物や学会等で発表され、多くの賛同が得られた。そして、本研究の生み出した様々な実証研究の成果は、当初の予測をはるかに越えて、より理論的な組織間関係論の世界へと当研究者を誘う役割を果たし、今後のさらなる研究活動の発展とその方向性を強く示唆するものとなった。
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