研究概要 |
交渉は対峙する2以上の個人,グループ,組織が相互に共有する問題を,各々の観点から解決する過程である.従って,意思決定の論理を考える決定分析によって交渉の論理を考察することは,交渉の論理を構築する1つの方法になると考えられる.また,決定分析の領域で近時開発されてきたパソコン・ソフトを適用することは,その論理を現実の問題解決への適用と結びつける方法への糸口にもなると考える.この観点から,第1年度の研究は,決定分析の論理を交渉とどのように結びつけていくかを考えること,および,コンピュータ機器の設置と決定分析用のパソコン・ソフトの一部(今年度はHIVIEW)に習熟することにあてられた.交渉を処方箋的意思決定(Prescriptive decision making)として考えるとき,実際的に行われた意思決定を記述する研究を行っても得られるものは多くない.また,教育の場で交渉を考えるとき重要なことは,いかに十分な準備をするかを教えることにある.とハ-ヴァード大のライファ教授は述べている.ここに,システム的に交渉をとらえることとして決定分析を適用する意義があると考え研究は進められている.交渉の準備に当っては,考えられなければならない7つの要因がある.(1)関心事,(2)選択案,(3)代替案,(4)正当性,(5)コミュニケーション,(6)良き関係,(7)コミットメント,である.このうち交渉の論理の核となるのは(1)〜(3)であり,そこには論理的な考え方が要求される.決定分析の適用もここにあるという立場から,問題の関心案はどこにあるのかを「価値の木分析」によって把握し,「多属性効用理論」によってそれを計量化することを試みる.それを基にして,いかに選択案を作っていくかを考える.という段階までを第1年度の研究として行っている.
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