平成7年度は紙の博物館所有の王子製紙の支店、工場の膨大な資料の整理と、データの集計、分析検討を行った。資料によっては予想以上に紙質が悪いうえに、保存状態が悪く、判読に手間取る資料があり、補助者に長時間の負担をかけたが、本研究費補助のおかげで資料の整理は順調に当初の計画以上に進んでいる。 平成6年度におこなった林業会社である王子製紙樺太分社研究をうけ、川下の製紙工場である大泊、豊原、泊居、落合工場の決算、原価資料を検討し、樺太分社の払出資料との突合を行った。樺太分社の決算資料のなかのパルプ原価計算表、抄造高表、使用材月別累計表(単位石高)が各製紙工場の原価数値、操業の概要の数値、各工場の操業の概要中調木室の項目の数値(石高)と完全に一致した。樺太の王子製紙の工場の資料は大泊、豊原、野田工場については昭和3年からその他は昭和8年から資料が現存すること、王子製紙の工場が期末に本社に提出した「決算報告書」資料の様式は各工場とも細部の差はあるがほぼ同一の様式を備え、昭和8年、16年に様式に変化が生じる点も各工場とも同一であることがわかった。 そこで細部は昭和5年の大泊工場の資料ついて検討し、論文を執筆した(投稿中)。そこでは帳簿組織を検討し、財務会計資料と原価資料の結び付きを検討し、同工場の原価計算、操業管理方法の全貌をほぼ明らかにした。次の課題として、大泊工場のそれ以降、他の樺太の工場、内地の工場の明治期(明治40年代)の資料を検討し、最終的に明治以降の王子製紙における原価計算、操業管理方法の発展を明らかにしたい。 なお本年、日本郵船の資料の中から明治以降の支店管理についての内部資料が発見された。戦前・戦中期の支店管理技法の研究という点で本研究目的と合致するので、補助金の一部をもちいて資料整理と研究をおこない論文を執筆した。
|