平成7年度単年度の補助申請であり、研究課題「企業の環境保全活動に関する会計分析の研究」について、できる限り年度内に成果があがるよう努めた。当初から予定した環境会計関連のデータベースの作成は、機器の納入が多少遅延したが、継続した整備を実施中である。また、企業の社会貢献指標に関連した会計の位置づけならびにその際の会計人の役割、環境会計をめぐる基礎概念としてのアカウンタビリティの拡充と当事者問題との関係、環境保全活動の基盤となる「持続的発展」の概念を会計上で操作可能にするための環境会計と伝統的会計との接点についての考察を集中的に行い、別掲の3つの個人論文として年度内に公表済みである。さらに、日本会計研究学会のスタディグループ「アカウンタビリティ概念の拡充」のメンバーの一人として、年度内に公表された中間報告書のとりまとめに参画し、現在、作業が進行中の最終報告書の作成にも関与している。企業の環境保全活動は先進国において近年実効をあげはじめた領域であり、世代内においても先進国と発展途上国における取り組みの差がみられ、また、世代間では大きな課題を残している問題領域である。このような問題領域に関して、会計がどのような役割を演ずることができるかについては、なおまだ未解決の部分が圧倒的に多い。したがって、今後も引き続き研究を継続することを意図しているが、科学研究費補助金の成果として、平成7年度において、研究の端緒となる会計分析の基盤をめぐる考察に関して、所期の研究実績をあげることができた。
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