本研究の目的は、『中心核活動を示す銀河の紫外線と赤外線光度のモニター観測から、赤外線最大光度の紫外線最大光度にたいする時間の遅れΔtを測定することで、これらの銀河までの距離決定の新手法を試みる』ことである。これは本研究で提案されたはじめての方法であるため、まず、既存の多波長時系列データを解析し、この方法がそもそも距離決定に有効であるか否かを検証した。 紫外線絶対光度L_<UV>と紫外光に対する赤外線最大光度の時間の遅れΔtがこれまで測定されている活動銀河核(AGN)はわずか7例しかない。活動銀河核を囲むダストの蒸発温度が一定であるとの合理的な仮定のもとで成立するL_<UV>∝(Δt)^2なる関係が、これら文献にあるAGNの観測例から裏づけられるか否かについて詳細に検討した。この結果、銀河核からの赤外光にダストの熱放射以外の成分が混入していると思われる3C446を除くと、活動銀河核はL_<UV>∝(Δt)^2におおよそ従っていることがわかった。この観測例だけから距離決定誤差は60%程度に相当する。単に文献から調べただけなので誤差は大きいが、今後、精度を上げていくためにはまず、赤外線と紫外線光度の時間相関の観測精度の向上をはかる必要がある。これにより、Δtの観測精度があがるだけでなく、ダスト層の傾き等の幾何学的情報も得ることができ活動銀河核モデルの向上にもつながっていく。 観測例に基づいて得られたL_<UV>とΔtとの関係によると、およそM_<UV>【approximately equal】-25等級でΔt【approximately equal】3年になる。このことから赤方偏移の大きい遠方のAGNを観測して距離決定を試みる場合、現実的なモニター期間中にΔtを決めるためには、あまり明るくないAGNを選ばなければならないことがわかった。これらの考察から、Z>1の活動銀河までの距離を決定するに必要な手順や装置の具体的検討が進み、本研究は、活動銀河の多波長モニター観測専用望遠鏡計画へと発展
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